研究は、熱帯地域に適した水再利用技術の研究開発を日本とタイとの国際協力研究として遂行するものです。 研究の枠組みには2つの側面があります。まず、日本国内の研究として、日本の科学技術振興機構(JST) と国際協力機構(JICA)が連携する地球規模課題の解決に資する国際協力プロジェクトとして、JSTより 平成20年度に採択され、日本国内の研究を先行させてきました。その間、JICAとタイ王国 自然資源環境省 環境質促進局の環境研究研修センター(ERTC)との間で共同研究プロジェクトを立ち上げるべく検討を重ね、 平成21年5月にODA事業として正式にスタートしました。もとよりJSTとしての国内研究とODA事業 としてのタイでの現地研究は一体不可分であり、その相乗効果が期待されます。日本側参加研究機関は、 東京大学、東北大学、早稲田大学、立命館大学で、タイ側参加研究機関は、ERTC、チュラロンコン大学、 カセサート大学です。さらに連携や研究ネットワークを広げることも視野に入れた活動を開始しています。

本プロジェクトは、「研究開発」であり、単なる技術移転や新技術研修ではありません。これまでの温帯地域に 位置する先進諸国で開発された水再利用技術を、熱帯地域に適したものとするために、正に、共同して研究開発 をしていかねばなりません。また要素技術開発だけでなく、分散型水循環システムの構築のための地域に根ざした 管理方法の開発も大切です。本研究が、タイと日本の共同研究として成果が実ることを期待しております。
山本和夫
研究代表者
東京大学環境安全研究センター 教授
際協力機構(JICA)とタイ王国天然資源環境省環境質促進局の 環境研究研修センター(ERTC)との間で共同研究プロジェクト「熱帯地域に適した 水再利用技術の研究開発」が開始されたことを非常に喜ばしく思います。本プロジェクトは、 広く適用可能な水再利用のための適正技術の開発と、水再利用技術利用のための枠組みを 効果的に実行するためERTCの能力強化を目的とします。熱帯地域に位置するタイは、 農業地域の灌漑用水だけでなく都市域および工業地域の水消費を支えるだけの多くの 水資源を持っています。工業化と急速な経済成長により水の消費が増加しています。 その結果、水環境と水資源への汚濁負荷増大は広く知られることとなりました。 タイ王国政府と関係機関は、水質基準を制定し工業排水に規制を設けることで環境を 保全しようとしています。しかしながら、水再利用技術の適用は、清浄な水資源を守り 水系生態系を保護するために取り組む価値のある非常に重要なプロジェクトです。 水再利用技術は、水資源保全と環境保護の両面にとって効果的な手段となります。

熱帯地域における水再利用に関する研究プロジェクトの開始において、私はJICA、ERTC および関係機関のプロジェクトへの支援を拡大していきたいと考えております。 プロジェクトが順調に開始されたことを祝福するとともに、水再利用に関わる研究と 技術開発を通じて我が国だけでなく他の熱帯諸国のさまざまな部門にとって適切かつ 適用可能な技術と方法論が生み出されることにより、プロジェクトが実り多いものになる ことを期待します。
Orapin Wongchumpit
タイ王国天然資源環境省
環境質向上局 局長
本研究プロジェクトは,科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)による地球規模課題対応国際科学技術協力の枠組みの支援を受けています。